きみに読む物語より

 いそおまえの時だ、おお魂よ、書物を離れ芸術を離れて、
言葉なき世界へ自由にはばたく時だ、一日は消え去り、日課は終った、
静かに全身をあらわし、おまえのこよなく愛する主題を見つめ、考えるがいい、
夜を、眠りを、死を、そして星たちのことを。

 それがわたしをまぼろしと夕闇にいざなう。
わたしは風のように旅立つ、白髪を逃げる太陽にふりみだし・・・

 別れにこれほど苦痛を覚えるのは、二人の魂が結ばれているからだ。おそらく、これまでも、これからも、ずっとそうだろう。
おそらく二人は前世で何千回となく一緒に生きてたのだ。その時々に、二人はお互いを見つけ出し、そして多分、その時々に同じ理由で別れざるを得なかった。
つまり、この別れはこれまでの一万年の終わりであり、同時に未来への前奏曲を言っていい。
 きみを見れば、美しさと気品があるのがわかる。そして、前世のどんなきみよりも、今のきみは優れている。
前世のぼくは、いつもきみを探していた。きみに似た人ではなく、きみ本人を。なぜなら、きみとぼくの魂は常に結ばれる運命にあるからだ。
そして、そのあとぼくたちは、訳の分からない理由で別れを強いられた。
 きみに言いたい。すべては、ぼくたち二人にとって上手くゆくだろうと。ぼくはそれを現実にするために、できるだけのことをすると約束する。
だが、仮に二人が二度と会わず、これが最後の別れになるのだとしても、必ず来世で再会することはわかっている。
ふたたび、お互いを見つけ出した時、運命の星が変わっているかもしれない。ぼくたちはその時代を愛し合うだけでなく、前世のすべての時代を愛し合って来たのだ。

 その時まで一度も出会わなかった。
あまりに突然であまりに甘美な愛、それが、
彼女の顔をかぐわしい花のようにひらかせ、
ぼくの心を根こそぎ奪い取った。

 落ち着きたまえ、気楽にわたしの相手をするがいい・・・
太陽がお前をのけ者にしないかぎり、わたしはお前をのけ者にしない、
川がお前のために輝くのを拒み、木の葉がお前のためにささやくのをやめない限り、わたしの言葉もお前のために輝き、ささやくのをやめはしない。

 わたしは夜通し幻想のなかをさまよい歩く・・・
眠る人々の閉ざされた目に、目をみひらいて身をかがめ、
さまよい歩く、混乱し、訳がわからず、釣り合いを失い、矛盾をかかえ、
ためらったり、見つめたり、かがみこんだり、立ちどまったり。

 溺れる者は最後の息をとめる水がどれなのか、知るすべはない・・・

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