トヨタ自動車のスマートシティー「Woven City(ウーブン・シティ)」の建設が2021年2月23日に始まる。
自動車メーカーである同社が街づくりを自ら手掛ける狙いは、新たな価値やビジネスモデルの創出だ。
Woven City(ウーブン・シティ)とは何か?
実際の開発を担うのは、傘下のウーブン・アルファである。トヨタ自動車は21年1月、先進技術や新規事業の開発を手掛ける子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスを設立。
ウーブン・シティの場所は、20年末に閉鎖したトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を利用する。将来的に約70.8万m2の範囲で街づくりを進める。
どんな街になるのか?
ウーブン・シティでは、150×150mの土地を1区画(原単位)として、各区画でさまざまな実証実験を進める。
「地上には、以下の3種類の道を設ける。」
- 自動運転車やゼロエミッション車などが高速で走行する自動車専用道
- 低速で走行するパーソナルモビリティーと歩行者が混在する道
- 歩行者専用の道
(1)を走行する車両の例としてトヨタ自動車は自動運転EV「e-Palette(イーパレット)」を挙げている。
地下にも物流用の自動運転車走行道を設置する計画である。
「加えて、以下のような取り組みも計画している。」
- 建物をカーボンニュートラル(炭素中立)な素材でつくる
- 建物の屋根に太陽光発電パネルを設置する
- 燃料電池などのインフラを全て地下に設置する
- 室内用ロボットの新技術を検証する
- センサーデータやAI(人工知能)を活用して健康状態のチェックなど生活の質を高める
- e-Paletteを人や物の輸送、移動店舗などに活用する
- 街の中心に公園や広場をつくり、住民同士がつながり合うコミュニティーを形成する
どんな人が住むのか?
まず、技術やサービスの「発明家」、およびその利用者である高齢者や子育て世代を入居させる。CES 2020では住民数を2000人程度と発表していたが、初期は360人程度となる予定である。
高齢者や子育て世代を優先的に入居させるのは、「多くの社会課題を抱えている」(章男氏)からだ。これらの人々と発明家を一緒に住まわせることで、課題解決に向けた発明を促す。発明家には居住期限を設け、期限までに成果が出ない場合は別の発明家に交代させる。
トヨタ自動車は、ウーブン・シティのパートナーをWebサイト上で募集している。20年11月時点で約3000の個人・法人から応募があったという。
どのような技術を検証するのか?
「トヨタ自動車は、ウーブン・シティで検証する技術として以下を挙げている。」
- 自動運転
- Mobility as a Service(MaaS)
- パーソナルモビリティー
- ロボット
- スマートホーム
- AI
データのプライバシーは大丈夫?
トヨタ自動車や、そのパートナーのNTTは、スマートシティーで得られるデータの扱いについて慎重である。「誰のためのデータなのか」(章男氏)、「データは囲い込まない」(NTT代表取締役社長の澤田純氏)と語っており、大量に集めた個人情報を利益に変える米Google(グーグル)との違いを明確にする。
実際、グーグルがカナダで進めていたスマートシティー開発計画はプライバシーの懸念を払拭できず、市民の反対を受けて頓挫した。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)のデータ独占に対する規制の動きが世界各国で活発化する中、トヨタ自動車やNTTの方針は有利に働く可能性がある。