🌀シリーズ⑧ 問いの狭間へ:記録社会とMemory Diveの世界へようこそ

あなたは、自分の記憶を編集できるとしたら、どこから手をつけますか?
あるいは、選ばなかった未来を、もう一度“再生”してみたいと思ったことはありますか?

記録が、人の未来を決める時代になった。
この都市では、個人の「能力」が常に数値化されている。
人々は、制限された自分の能力値を超えて、“体験しえたかもしれない人生”を味わうために、ある施設へと足を運ぶ。

私は「Memory Dive」という施設で働いている。
受付に立ち、装置を操作し、客が持ち込んだ“物語データ”を読み込む。
そこには、選ばれなかった未来、忘れられた記憶、編集されなかった問いが眠っている。

この都市で生きることは、数値で測られる自分と、測れない問いとの間で揺れることでもある。
私は、仕事上多くの“問い”に触れるうちに、他人の体験までも“自分の問い”として引き受けてしまうようになった。
問いを閉じたいのに、閉じることができない。
考えすぎてしまう性格が災いし、私はいつしか“問いの渦”に巻き込まれていた。


🌙夢機能とは?

この物語では、編集者の声をもとに、私は夢機能を新たに提案する。
夢機能とは、Dive Systemにおける「選ばれなかった未来」を編集者が体験・検証するための装置である。
今日も、人々は夢機能を通じて、選ばなかった未来に触れるためにやって来る。

だが、夢機能には、ひとつ気になる点がある。
それは、構造的矛盾──編集者が問いを閉じようとするたびに、AIはその問いを拡張しようとする。
本来、編集者の主体性を支援するはずの装置が、逆に選択肢を増やし続ける。
問いを閉じるはずが、問いのループに迷い込む。
人々は「問いを閉じた」と感じているだけで、実際には問いの狭間に立ち続けているのかもしれない。

▶ 詳しくはシリーズ⑦『名前のない記憶』へ
🧠 シリーズ⑦『名前のない記憶』はこちら → nameless-memory


🕳Memory Diveとは?

Memory Diveは、記録の深層へ潜る装置。
過去の選択、忘れられた感情、未編集の余白にアクセスし、
“問い”を再構築するための旅路。

この装置は、記録社会における編集者のためのインターフェースであり、
問いを閉じるための“編集儀式”の舞台でもある。

▶ 詳しくはシリーズ⑥《未選択の編集点》へ
👉 記事一覧リンク:シリーズ⑥《未選択の編集点》


🧠記録社会とは?

この都市では、すべての行動・感情・選択が記録される。
人々は自分の記憶を“編集”し、再生し、時に削除する。
記録は、能力値と結びつき、未来の選択肢を制限する。
その中で、「問いを閉じる」ことが、ひとつの生き方となっている。

だが、問いを閉じたつもりでいても、
それは“問いの狭間”に立っているだけかもしれない。


このブログでは、シリーズ⑧『問いの狭間』の世界観と構造的テーマを紹介しています。
電子書籍本編では、記録社会を舞台にした短編集として、
家族・仕事・記憶・選択・存在といった問いをめぐる物語が展開されます。

あなたの問いは、閉じられていますか?それとも、まだ狭間にありますか?


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