セカンドキャリアは、ゼロからでも再構成でもかまわない

50代の働き方

── “過去の自分”を使うも使わないも、自分が決めていい

「過去の経験が活かせる仕事」って、

実は「過去からしか選べない」という前提に立っている気がした。

でも今、自分がやってみたいのは、履歴書には載らないようなこと。

ゼロからでも、組み直しでも、

セカンドキャリアは“自分にフィットするかどうか”がいちばん大事なのかもしれない。

「履歴書に書けること」と「自分がやりたいこと」のズレ

「過去の経験が活かせる仕事を探しましょう」

ハローワークの冊子にそう書かれていて、手が止まった。

それは理にかなっているし、親切な提案でもある。

でも、その言葉のどこかが、自分にはしっくりこなかった。

今やってみたいことは、本当に「過去の延長線上」にあるのだろうか?

むしろ、“まったく違うこと”を考えている自分がいた。

そして、そこに正解があるような気もしていた。


本業がなくなった日、副業の立ち位置に迷いが生まれた

履歴書を書いてみて、愕然とした。

整備、開発、知財と、多様なキャリアを歩んできたつもりだった。

けれど、それは会社という場の中での話だった。

社外に持ち出せるスキルとして並べてみると、書ける項目は驚くほど少なかった。

「元〇〇の経験を活かせる業務」として紹介されている仕事は、

それは転職ではなく、単なる“転社”にしか見えなかった。

そんなとき、ふと思った。
——そうか、もう「本業」がないんだ。

退職したことで、本業は消えた。

副業を本業にしてもいい。けれど、それはもう“副業”ではなくなってしまう。

この、言葉のバランスが崩れるような感覚に戸惑いながら、

「今の自分は何者なのか」を見つめ直すことになる。


キャリアを解体したら、組み上がらなくなった

新しいことに手を出すのが好きだった。

80%くらいまではできる。でも、あるところで「もういいかな」と思ってしまう自分もいる。

求人票を眺めていても、「できそうなこと」はたくさんある。

でも、「できる」と言い切れるかといえば、そうではなかった。

企業が求めているのは、即戦力だった。

準備中の人材ではなく、「すでに使える誰か」だった。

その現実に、地味に打ちのめされた。

キャリアをいったん解体してみた。

でも、組み上げようとすると、うまくパーツが噛み合わない。

“これまでの自分”が、“これからの自分”にならない。


「元〇〇ですよね?」に、返事ができなかった日

久しぶりに会った知人に、こう言われた。

「〇〇さんって、元〇〇ですよね?」

そのとき、言葉に詰まった。

たしかにそうだ。けれど、〇〇はとっくに辞めた。

そのあと△△を始めたが、それも辞めて、次に××をやってみたけれど、それも今はやっていない。

でも、いちいち説明するのも億劫で、

「はい」とだけ答えた。

誰かの中に残っている自分の“名刺”が、

もう手元にないものなのだと思い知らされる瞬間だった。


ゼロからか、再構成か。どちらでもいいという自由

まったく新しいことを始めるのは、正直、怖い。

でも、どこかでその「何者でもない時間」に救われてもいた。

過去の経験を活かしてもいい。

活かさなくても、別にいい。

“使うかどうか”を決めていいのは、自分だけだ。

自分のキャリアを、自由に組み替えていい。

順番に従わなくていいし、整合性もいらない。

ただ、“いま自分にとって意味がある形”にしていくこと。

それが、再構成という選択肢なのだと思う。


📌 次回予告: 第5話|揺れながらでも書いてみたら、“これまで”がつながった
過去を振り返り、迷いながら言葉にしたとき、意外なつながりが見えてきた。
書くことで再構成されていく“自分の地図”の話。


🔗 この連載の一覧はこちら:  
📘 [セカンドキャリアを組み直す50代の記録]

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