行動経済学とは

疑問に思ったこと(102)

行動経済学とは

行動経済学とは、経済学のモデル理論に心理学的に観察された事実を取り入れる研究手法です。

行動経済学は、心理学的エビデンスとの整合性を満足する代替理論を構築することを目的としています。

行動経済学は、第一世代(旧行動経済学)と第二世代(新行動経済学)に分けられます。

第一世代の研究者としては、ハーバート・サイモン、ダニエル・カーネマン、リチャード・セイラーらがノーベル経済学賞を受賞しています。

第二世代の行動経済学者は、新古典派経済学のモデルを踏襲しつつも、新古典派が採用していた利己性・合理性・時間整合性などの仮定を緩和することによって、心理学的エビデンスに整合する理論の構築を目指しています。

ところで、経済学とは

経済学とは、社会科学の一領域であり、経済現象を対象とする学問です。

経済学は、経済現象の法則を研究する学問であり、人間社会における物質的な財やサービスの需要と供給の法則を研究する学問とされます。

経済学は、人間の行動を研究する学問でもあり、人間の欲求やニーズ、価値観、意思決定、行動、選択、制度、制約、競争、協力、交換、分配、公正、効率、福祉、成長、発展、持続可能性、不確実性、リスク、不完全性、情報、学習、進化、革新、変化、歴史、文化、社会、政治、法律、倫理、哲学、心理、認知、行動、生物学、物理学、数学、情報科学、工学、自然科学、人文科学、芸術、文学、言語、コミュニケーション、教育、健康、福祉、環境、エネルギー、技術、産業、企業、市場、金融、政府、国際関係、地域開発、都市計画、交通、観光、スポーツ、エンターテインメント、メディア、インターネット、AI、ロボット、ブロックチェーン、仮想通貨、などの多様な分野と関連しています。

行動経済学の代表的な理論と活用事例12選

理論1.ハロー効果

ハロー効果とは、対象を評価する際に目立つ特徴に影響を受けると、ほかの項目も同じような評価になってしまう心理現象だ。後光効果とも呼ばれる。

特定項目の評価の高さによって、ほかの項目の評価も上がる効果をポジティブ・ハロー、逆に評価が下がる効果をネガティブ・ハローと呼ぶ。

【ハロー効果の活用事例】
・化粧品の商品広告に美肌で有名なインフルエンサーを起用する
・商品Aの有効成分が商品Bの### 倍などと数値的なインパクトを示す

理論2.プロスペクト理論

プロスペクト理論は、不確実性の高い複数の選択肢がある場合、人はそれぞれの損得勘定で判断したり選択したりするという理論だ。

消費者は損失を回避したいという心理で意思決定をする傾向にあり、それぞれが期待する価値が支払った損失分を超えるかを判断材料に行動する。よくある事例が宝くじだ。当選確率が低くても、100円のクジで100万円が当たる可能性があれば購入してしまう。

【プロスペクト理論の活用事例】
・商品購入後30日間は全額返金可能というキャンペーンを実施する
・商品購入者に期間限定のポイントを付与し、期限切れまでに次の購入を促す

理論3.サンクコスト効果

サンクコスト効果はコンコルド効果として知られる理論である。サンクコスト(埋没費用)はこれまでにすでに投資されたコストであり、お金だけでなく時間なども含まれる。

時間やお金をかけて継続してきたことは中止しづらい。結果的に損するとわかっていても同じ状態を続けてしまうことはよくある。

【サンクコスト効果の活用事例】
・継続課金サービスで退会すると失効するポイントを付与する
・指定金額以上の購入で特典がもらえる商品を販売する

理論4.現状維持バイアス

現状維持バイアスは、自分が置かれている現状維持を優先しやすいという理論だ。

仮に、サービスに加入して今後の生活が向上するとしても、現在の生活環境を変えることにリスクを感じる人もいる。一度契約したサービスをなかなか変更できないのは、現状維持バイアスが関係している可能性が高い。

現状維持バイアスと同じように、現在の価値判断を優先する理論として、現在志向バイアスもある。将来期待される大きな利益よりも現在得られる小さな利益を優先するという理論だ。そのほかにも、一度入手したものは手放しにくいという「保有効果」という理論もある。

【現状維持バイアスの活用事例】
・サブスクリプションサービスの初月会費を無料にする
・返金保証付きの商品を販売する

理論5.おとり効果

おとり効果は、劣った選択肢の存在によりほかの選択肢が魅力的に感じてしまう理論だ。おとりを提示して消費者の選択肢を絞ることで成約率を高められる。

【おとり効果の活用事例】
・A、Bプランよりも付加価値の割に価格が高いCプランを提示する

理論6.アンカリング効果

アンカリング効果は、船を係留するアンカー(碇)から生まれた言葉であり、係留効果とも呼ばれる。購買や契約などの意思決定に際して、事前に得た数値情報などが判断に影響を及ぼすという理論だ。

購入しようと思っていなかった商品であっても、「タイムセールで5割引」「この日だけ3割引」などの情報を目にすると、購買意欲が高まらないだろうか。このようにインパクトのある情報を先に提示し、相手の潜在意識にアンカーを打ち込めば、価値判断を変えられる可能性がある。

【アンカリング効果の活用事例】
・スーパーのチラシにタイムセール割引などの折込チラシを入れる
・契約プランを年額12万円ではなく月額1万円にする

理論7.バンドワゴン効果

バンドワゴン効果は、他人の行動や発言によって自分の行動が決定されやすい心理現象だ。群衆行動や同調行動とも呼ばれる。長い行列ができる飲食店はおいしいと感じたり、口コミや評価がよい商品は安心できると考えたりしてしまうケースがよい例だろう。

【バンドワゴン効果の活用事例】
・商品の購入数を表示して多く購入されている商品を目立たせる
・ランキングを設けて人気商品をわかりやすく表示する

理論8.バーナム効果

バーナム効果は、多くの人に当てはまる普遍的な内容が今の自分に該当すると判断してしまう心理効果だ。占いの手法としてもよく知られている。

たとえば、肌荒れは肌ケア不足ではなく睡眠不足による影響もある。よく眠れていない消費者が「素肌の健康には質のよい睡眠が不可欠」といった寝具広告を見れば、「今の自分の肌荒れは疲れているから」と認知して商品を購入する可能性もある。

【バーナム効果の活用事例】
・健康飲料の広告に「眠れずに疲れが取れない40代へ」などと記載する

理論9.フレーミング効果

フレーミング効果は、同じ内容なのに表現の小さな違いから判断が変わる心理効果だ。

たとえば、1個300gのリンゴを通販で購入する場合、リンゴ10個よりもリンゴ3kgのほうがお得に感じる人もいる。また、同じサービスでも「契約者の90%が継続利用するサービス」のほうが、「契約後10%の人が解約するサービス」よりも印象はよいだろう。

【フレーミング効果の活用事例】
・飲料品の有効成分表示をgからmgに変更する

理論10.ザイオンス効果

ザイオンス効果は、接触機会が多くなるほど対象物への興味関心や好感度が高くなる心理効果だ。最初は購買意欲が高くなかった商品でも、ネットや雑誌などで見る機会が増えると購入してしまうことがある。営業活動の基本であるアポイント数を増やす手法も、ザイオンス効果を狙っているのだろう。

ただし、ザイオンス効果には以下のような注意点もあるので押さえておきたい。

・接触回数の増加による効果の限度は10回まで
・最初から印象が悪い対象には効果がない

【ザイオンス効果の活用事例】
・見込み客にSNS広告などで継続的にアプローチする
・期間限定の割引サービスを行って顧客との接触機会を増やす

理論11.認知的不協和

自分の考えと実際に取った行動が一致していない場合など、認知の不一致があった際に不快感があり、矛盾点を正当化しようとしてしまう心理効果である。認知的不協和の例としては、運動量が減ってしまう夜に食事をすると太りやすいと分かっているのに、「腹が減ったままでは眠れない」と自分を正当化して夜食を食べてしまうといった事例が挙げられる。

【認知的不況和の活用事例】
「炭水化物を抜かずに痩せるダイエット」と宣伝してサプリメントを販売する

理論12.現在志向バイアス

たとえ将来的に大きな利益が得られるとしても、今すぐに確実にもらえる小さな利益の方を過大に評価してしまうという心理効果だ。有名な「マシュマロ実験」では、部屋にあるマシュマロを監督者が帰ってくるまでに食べなければ、もう一つを褒美にもらえるという内容だったのにもかかわらず、被験者の子供はマシュマロを食べてしまった。

将来的な利益は、自分にとってどれほどの価値があるかを判断しにくい。そのため、今の自分にとって分かりやすい価値を優先してしまうために起こると言われている。

【現在志向バイアスの活用事例】
・本日限りで購入者特典をプレゼントする
・本日限りの割引サービスを行う

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