自己紹介に詰まったとき、“役割で語れない自分”に出会う

50代の働き方

平均値のキャリア診断と、視点を変える気づきのはじまり

この連載について

空き家や不用品の片づけを通して「暮らしを整える」ことに向き合ってきた筆者が、

次に見つけた“片づいていないもの”──それは、自分の働き方と役割でした。

このシリーズでは、定年退職してからではなく、

「会社にいながらも“その先”に気づき始めた50代の視点」から、

これまでの働き方と、これからの組み直しについて綴っています。

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「今、何されてるんですか?」という問いに詰まった

「今は、何をされてるんですか?」

久しぶりに会った知人にそう聞かれて、返事に詰まった。

会社を辞める前なら、「〇〇部の開発担当です」と自然に出てきた言葉。

でもいまは、それに代わる一言が見つからない。

副業はしている。でも、正式な肩書きではない。

ましてや「自由業です」と答えるには、まだ自分でもしっくりきていない。

「ちょっと今は……いろいろやってます」

あいまいな言葉で笑ってごまかしながら、心の中で自分に問い返していた。

「自分って、今、何者なんだろう?」


“名刺のない日々”が始まって、数週間が過ぎたころ。

なんとなく、肩書きの代わりになる何かを探したくなって、

ハローワークのキャリア相談に申し込んだ。

やったことは、過去の職務経験を整理して、履歴書を作る作業だった。

それと合わせて、いくつかの項目に答えるキャリア診断テストを受けた。

「興味関心の傾向を知りましょう」と出されたのは、

【R】現実的 /【I】研究的 /【E】企業的 ——この3つが、自分に当てはまるという診断だった。

「まぁ、たしかにそうかもしれないな」と思った。

整備、開発、知財──一通りの職場を経験してきたことにも、納得はあった。

でも、そのあとだった。

「あなたが大事にしたい価値観はどれですか?」という項目で出た結果。

・専門志向
・経営管理志向
・自律志向
・企業家志向
・生活重視志向

これら5つすべてが、「5点中3点」。

つまり、どれも平均。どれも突出していない。

相談員の方が、「器用なタイプですね」と言ってくれたけれど、

正直、その診断結果に私は少し戸惑った。

「私はいったい、何を大事にしたいと思ってるんだろう?」
「どの方向が、自分にとって“強み”と言えるんだろう?」

再就職先を探すには、“自分の希望”が必要だった。

でも、その希望が、うまく言語化できなかった。


家に帰ってからも、診断の紙をじっと見つめながら、ぼんやりと考えていた。

会社での仕事に、不満はなかった。

整備も、開発も、知財の仕事も、それぞれにやりがいがあったし、

それなりの成果も出してきたつもりだった。

だからこそ、「やり切った」という感覚もある。

そして、“やり切ったあと”の自分が、

もう一度“同じ型”には戻れないような気もしていた。


気づけば、自分自身をずっと「外から見る訓練」ばかりしてきたのかもしれない。

肩書きで語る自分、職務経歴書で説明できる自分。

それがなくなったとき、何が残るんだろう。

もしかしたら、これからは“視点を変えて自分を見る”ことが必要なのかもしれない。

役割ではなく、価値観の手触りで。

数字や点数ではなく、「何にひっかかりを覚えるか」で。

平均値の紙を握りしめながら、

私はようやく、自分の言葉で“何かを語り直すこと”のスタートラインに立った気がした。


📌 次回予告: 第3話|“やったことがないこと”が、自分をよく映す鏡だった
副業は「稼ぐこと」より「自分を棚卸すこと」だった。経験を手放しすぎず、あらためて触れてみた日々の話。
第3話|“やったことがないこと”が、自分をよく映す鏡だった


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